
【なぜ?】高齢化で賃貸を借りられない3つの理由|70代の部屋探し事情と解決策
【なぜ?】高齢化で賃貸を借りられない3つの理由|70代の部屋探し事情と解決策

日本の高齢化は世界的にも類を見ないスピードで進んでいます。総務省の最新データを見ても、65歳以上の人口は総人口の約3割と過去最高を更新し、100歳以上の高齢者は全国で初めて10万人を突破しました。まさに空前の「超高齢社会」を迎えている日本ですが、その陰で非常に切実な社会問題が浮き彫りになっています。
それが、「高齢になると、お金があっても賃貸住宅を借りられない」という問題です。
「アパートの部屋自体は空いている」「借り手側には十分な貯金があり、健康にも問題がない」にもかかわらず、不動産会社や大家さんから入居を拒否されてしまうケースが急増しています。
本記事では、報道番組の取材で明らかになった当事者のリアルな体験談や大家(貸主)側の抱える切実なリスク、私たちが知っておくべき解決策について詳しく解説していきます。
1. データで見る現実:65歳以上の「3人に1人」が拒否された経験あり
まず、どれだけの高齢者が部屋探しで壁にぶつかっているのか、実際のデータと現場の声を見ていきましょう。
調査結果によると、65歳を超えてから賃貸住宅の部屋探しをした人のうち、約3人に1人(およそ33%)が「年齢」を理由に契約を断られた経験があると回答しています。
これは単なる噂や例外的なケースではなく、高齢期を迎えた誰もが直面し得る共通の課題となっているのです。
【事例】74歳男性「書類も通って引越し日を決めようとした矢先に…」
都内に住む鈴木さん(74歳・事例当時68歳)のケースは、この問題の根深さを象徴しています。
鈴木さんは6年前、同居していたご両親が亡くなったことをきっかけに、1人暮らしができる新しい賃貸部屋を探し始めました。当時の鈴木さんは68歳。要介護認定はおろか健康上の問題は一切なく、自立した生活を送る体力を十分に備えていました。
さらに、家賃の支払い能力を示すため、銀行の通帳のコピーまで不動産会社に提出。「預貯金も十分にある」と判断され、担当者からも「これで全く問題ありません」とお墨付きをもらっていたそうです。
しかし、引っ越しの日程をいよいよ決定しようとしていたまさにその時、状況は一転します。
「すいません、やっぱり断られました」
不動産会社からの突然の連絡でした。理由は明確な説明もないまま「やはり年齢が…」という一点のみ。預金もあり、健康で、家賃滞納のリスクもない人物であっても、「68歳」という年齢の数字だけで弾かれてしまったのです。
なぜ、これほどまでに高齢者の入居審査は厳しいのでしょうか?
2. なぜ大家さんは貸せないのか?表面化する「孤独死」リスクのリアル
借り手側から見れば「高齢者に対する不当な差別」と感じられるかもしれません。しかし、貸し手である大家(家主)側にも、おいそれと貸し出せない深刻かつ悲痛な事情が存在します。
その最大の要因が「孤独死(孤立死)のリスク」です。
【大家の被害例】死後数ヶ月が経過、損害額は200万円以上に
北海道札幌市にあるアパートの大家さんの事例です。このアパートでは、70代の単身男性が入居していましたが、ある日、室内で亡くなっているのが発見されました。
発見された時にはすでに死後数ヶ月が経過しており、遺体の腐敗が進んでしまっていたのです。この事故が発生したことで、大家さんは以下のような甚大な損失を被ることになりました。
1. 原状回復費用(特殊清掃や床の張り替え等):約150万円
孤独死が発生すると、一般的なクリーニングでは臭いや汚れが取れず、床材や壁紙を全て撤去・張替する「特殊清掃」が必要になります。今回は遺族とも連絡がつかず、大家さんが150万円全額を自己負担せざるを得なくなりました。
2. 家賃収入のストップ(1年以上の空室):
警察の検証や遺品整理、裁判手続き、リフォームなどに時間がかかり、その部屋は1年以上も誰にも貸せない状態が続きました。
3. 事故物件化による家賃の下落:
心理的瑕疵(心理的抵抗)が生じるため、工事を終えて新しい入居者を募集するにしても、周辺相場より家賃を下げて募集しなければならなくなりました。
大家の本音:「起きる確率は低くても、1度起きれば即・経営破綻」
この大家さんは「高齢者を受け入れたい気持ちはある」と前置きしつつ、次のように恐怖を語っています。
「こういったケースになる確率は決して高くはありません。しかし、たった1度でも発生してしまうと、被害額が大きすぎて経営に深刻なダメージを受けます。だからこそ、貸すのが怖くなってしまうのです」
多くの個人大家さんにとって、賃貸経営は老後の貴重な資金源でもあります。万が一の事故で数百万円単位の持ち出しが発生するリスクを考えると、「リスクを回避するために、最初から高齢者の入居を断る」という判断をせざるを得ないのが賃貸市場のリアルなのです。
3. 高齢者賃貸の壁を打ち破る2つの解決策
「借りたい高齢者」と「リスクが怖くて貸せない大家」。この双方の利害が不一致となっている現状を打ち破るため、現在、新しい住まいの選択肢や法的な取り組みが進んでいます。
解決策①:見守りサービス付き「シニア向け賃貸住宅」
1つ目の解決策は、大手ハウスメーカーなどが手掛ける「シニア向け賃貸住宅」への入居です。これは一般の賃貸アパートとは異なり、原則「60歳以上」「自立して暮らせる人」を入居条件とした専用の賃貸住宅です。
【シニア向け賃貸住宅の特徴】
- バリアフリー構造: 段差のない床、手すりの設置、車椅子でも移動しやすい廊下幅など。
- 緊急通報システムの完備: 体調が悪くなった際、ボタン一つでガードマンや警備会社へ通報が可能。
- 専門スタッフによる訪問: 月に1度、看護師や社会福祉士などの資格を持つ相談員が訪問し、健康面や生活の悩みをヒアリング。
家賃例として、首都圏の2LDK(約60平米)の部屋で月額約18万円ほど。周辺の一般賃貸相場に比べると2割ほど高く設定されていますが、この「2割の上乗せ分」には見守りサービスや安心感が含まれています。
前出の鈴木さんも最終的にこのシニア向け賃貸住宅へ入居することができ、「体調を崩しても通報ボタンがあるし、月1回相談員さんが来て話を聞いてくれるのが何よりの楽しみ。本当にうまく探せて良かった」と笑顔を見せています。
解決策②:「住宅セーフティネット法」の改正と安否確認IT技術の普及
2つ目の解決策は、国による制度支援とテクノロジーの活用です。
高額なシニア向け賃貸住宅に入居できる富裕層ばかりではありません。「家賃相場通りのアパートに住みたい」という一般的な高齢者を救うため、政府は「改正住宅セーフティネット法」を施行しました。
この制度では、高齢者や低所得者などの「住宅確保要配慮者」の入居を拒まない賃貸住宅(セーフティネット登録住宅)を増やし、国や自治体が支援する仕組みを整えています。
【大家さんの負担を減らす取り組み】
- 安否確認・見守りサービスの導入補助:
電気の使用量変化や、ドアの開閉センサー、スマート電話などを使った「見守りIT機器」の導入を支援。孤独死を未然に防ぐ、または早期発見できる環境を作ります。 - 残置物処理の円滑化:
万が一入居者が亡くなった際、遺品の整理や契約解除の手続きをスムーズに行えるよう法的なルールを整備し、大家さんのリスクを低減。
築年数が古く、駅から少し離れた物件を所有する大家さんにとっても、見守りサービスや保証をセットにすることで、「高齢者を安心して受け入れ、空室を埋める」という双方にとってメリットのある選択肢が広がってきています。
4. これからの部屋探しで高齢者・ご家族が意識すべきポイント
もし、ご自身やご家族(親御さんなど)が60代後半以降で賃貸住宅を探すことになった場合、どのように行動すればスムーズに契約までたどり着けるのでしょうか。ポイントを3つにまとめました。
- 早めの情報収集と「シニア専門相談窓口」の活用
一般の不動産ポータルサイトだけでなく、自治体の住宅課や、シニア専門の部屋探しエージェント、UR賃貸住宅(年齢制限が比較的緩やか)を初期段階から活用する。 - 「見守りサービス」の導入を自分から提案する
「民間の見守りアプリや訪問サービスを自分で契約して利用します」「緊急連絡先を2名以上立てます」といった条件を提示することで、大家側の心理的ハードルを下げられる。 - 自立して動ける「60代のうち」に動く
70代後半や80代になってからの引越しは、体力面だけでなく審査の厳しさも跳ね上がります。元気で判断力・体力があるうちに、長期的に住み続けられる環境へ移転しておく。
5. まとめ:社会全体で「安心して貸せる・借りられる」仕組みづくりを
日本が超高齢社会を邁進する中で、「住まいの確保」は人間の尊厳に関わる極めて重要で切実な問題です。
- 借り手(高齢者): 年齢だけに捉われず、見守りサービス付き物件やセーフティネット住宅などの選択肢を知っておくこと
- 貸し手(大家): 最新の見守りIT技術や法的な保証制度を活用し、孤独死リスクを制御しながら空室対策を図ること
単にどちらか一方に歩み寄りを求めるのではなく、「借り手も安心でき、貸し手もリスクを負わずに済む環境・仕組み」をテクノロジーや制度で支えていくことが、これからの日本社会に強く求められています。
・動画タイトル:「家を借りられない」高齢者が増加 家主を悩ませる“貸せない理由”【報道ステーション】
・配信チャンネル:ANNnewsCH
・URL://www.youtube.com/watch?v=j1F6MrQMrmk